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納税義務が免除されてもあえて課税事業者を選択するケース~消費税の基本を確認3~

以前、消費税の納税義務者と消費税が免除される事業者(免税事業者)について書きました。

実際には、消費税の納税義務が免除されるにもかかわらず、課税事業者を選択するケースがあります。

税理士試験で消費税法に合格してから現在までの約7年、消費税については実務で使用する部分を中心に知識をアップデートしてきました。 そして...

消費税の基本的な仕組み

消費税の納税とは、簡単に言ってしまえば、

「受け取った消費税」から「支払った消費税」を差し引いて差額を納付するだけ

ということになります。

全額差し引けるのか?などの論点はありますが、とりあえず無視しておきます。

・物を販売したときに受け取った消費税
・物を買ったときに支払った消費税
と考えると、消費税が課される事業なら、受け取る消費税の方が多くなるのが一般的です。

例えば、税抜100円の物を200円で販売する場合。
・受け取った消費税  200円×8%=16円
・支払った消費税  100円×8%=8円
差額の8円が手元に残るため、それを納税することになります。

したがってこの場合、この8円を納税する必要がない「免税事業者」でいたほうが事業者にとってはお得ということになります。

どのような事業者がわざわざ課税事業者を選択するのか

では、赤字事業の場合はどうでしょうか?

例えば、税抜200円の物を100円で販売する場合。
・受け取った消費税  100円×8%=8円
・支払った消費税  200円×8%=16円
となり、支払った消費税のほうが8円多くなってしまいます。

この場合のように、支払った消費税が多い場合には、差額を還付してもらうことが出来ます。

ただし条件があり、課税事業者でなければ還付を受けられないことになっています。

つまり、「免税事業者には還付も受けさせない」「良いとこ取りはさせない」ということでしょう。

事業としては成り立っていませんが、赤字商売が続く場合には、課税事業者になって還付を受けたほうがお得ということになります。

還付を受けているもっと一般的なケース

赤字事業は消費税の還付以前の問題ですが、もっと一般的なケースで還付を受けている会社が沢山あります。

それは、輸出取引を多く行っている国際企業です。

輸出取引は消費税が0%とされています。

上のケース(税抜100円の物を200円で販売)であれば
・受け取った消費税 200円×0%=0円
・支払った消費税 100円×8%=8円
となり、支払った分の消費税8円が還付されることになります。

有名なグローバル企業が消費税の還付を受けている(消費税を負担していない)という記事をたまに見かけますが、このような理由によるものです。

選択する場合の注意点

このように、事業者の立場で考えた場合、免税事業者となる権利があっても、課税事業者を選択したほうがメリットが大きいというケースが起こり得ます。

ただし、注意すべきこともあります。

必要な手続き

課税事業者になるためには、そのための届け出を税務署にする必要があります

その届け出をした翌課税期間(一般的には翌年)からしか、適用を受けることができません。

逆に言えば、ある年に、「免税事業者であるもののあえて課税事業者になろう」とするのであれば、前年中に届け出をしておく必要があるということになります。

変更への縛り

課税事業者を選択した場合、最低2年間は継続しなければなりません。

ある1年だけ還付を受けて、その翌年にすぐ免税事業者に戻るということは認められません。

最後に

これらの点を考慮してもメリットがありそうだと思われるのであれば、一度検討してみる価値はあるかもしれません。

とはいいつつ、上記の内容は、これでもかなり端折って書いています。

実際に検討する場合には、慎重に専門家に相談しながら進めたほうが間違いありません。

消費税はこのような選択関係、手続き関係でのトラブルも多いようですので、お気をつけください。

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【編集後記】

昨日は、関東信越税理士会埼玉県支部連合会が主催する無料のセミナーに参加しました。
無料ということもあってか?会場は超満員。
人口密度の高さと暑さで、思わず退席しようかと思いましたが、なんとか我慢しました。

【昨日の1日1新】
*「1日1新」とは→詳細はこちら

埼玉県連(税理士会)のセミナー参加
にっぽん烏龍

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