税制改正を理由とする減価償却方法の変更は無条件で認められる?

企業会計基準委員会のホームページで「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い」が公表されました。

この取扱いでは「平成28年度税制改正に合わせての減価償却方法の変更が正当な理由に基づくも」であることが明確になりました。

想定通りの結論ではありましたが、その結論に至るまでには、それなりの手続きと理屈付けが必要なようです。

税制改正による減価償却方法の変更~会社側が戸惑うことは避けてほしい…
平成28年度税制改正では、法人税(所得税)で固定資産(建物附属設備と構築物)の減価償却方法が見直されます。 税制改正による変更内容...

平成28年度税制改正の内容と税務上の取扱い

一応おさらいのために書きますと、平成28年度税制改正で減価償却方法について、次のような改正がありました。

*税制改正内容:減価償却方法の変更・・・(従来)定率法⇒(改正後)定額法

*対象となる固定資産:建物附属設備、構築物のうち平成28年4月1日以後に取得するもの

これは税制改正なので、税金計算上はこの改正に沿った処理をしていれば問題ありません。
平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備と構築物の減価償却は定額法とする」で終わりです。

会計上の懸案となっていたこと

一方で、会計上も税制改正内容をそのまま適用すればOKなのか?というと、それほど単純ではありません。

原則として、会計と税法は目的が違うため、税制改正は会計基準に影響を与えるものではないとされているからです。

次のような事実(問題点)を踏まえて、企業会計上、どう対応すべきかが懸案となっていました。

・会計上、減価償却方法を変更する場合には正当な理由が必要となる。
・原則として会計と税務は別であり、税制改正が無条件に会計処理変更の理由として認められるわけではない。
・現実的には、世間の多くの会社は減価償却に税法基準を採用し、会計上も許容されている

会計上の取扱い

結論としては、今回の税制改正を機に減価償却方法を変更する場合には、「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」に該当することとなりました。

つまり今回は、税制改正が償却方法変更の正当な理由として認められるということです。

もしも万が一認められなかったとしたら、それぞれの会社でその償却方法の変更が妥当なのかどうか」を判断せざるを得なくなるわけですから、どう考えても現実的ではありません。

その意味では想定通りの結論だったということになるのではないでしょうか。

最後に

今後の対応として、次のような記載がありました。

今後、抜本的な解決を図るために減価償却に関する会計基準の開発に着手することの合意形成に向けた取組みを速やかに行う予定です。

「開発に着手する」のではなく、開発に着手することの合意形成に向けた取組みを速やかに行う」という、なんとも面白い文章です。

・現状の仕組みでは限界がある。
・従って、今回のような検討が行われている。
という現状認識があるにもかかわらず、新たな会計基準を開発すること自体に合意が必要というのは、普通の感覚からするとなかなか理解できない気がしますが、どうなのでしょうか。

いずれにしても、会計と税務の乖離が進み、実務担当者の負担が増すことだけは避けるべきであると強く思っています。

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【編集後記】

「貞子」の生みの親、鈴木光司氏の教育講演会を聴く機会がありました。
「教育」と言いつつ、ビジネスマンにとっても役立つ内容がかなりありました。
「リング」「らせん」は20年近く前に買いましたが、それ以外の本も買ってみようかと思っています。

【昨日の1日1新】
*「1日1新」とは→詳細はこちら

鈴木光司氏の講演会
草野球でいつもと違うルーティン

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