会社を買収した場合の経理関連業務への影響と対応すべきこと

一時期ほどテレビで耳にする機会が少なくなったM&A(企業の買収や合併など)ですが、中小企業を中心にその件数は増加傾向が続いています。

事業承継を目的としたM&Aなどにより、新たに会社を買収した場合の経理業務への影響や対応すべきことについて、簡単に確認してみます。

M&Aに関する最近の傾向

M&Aというと、まだまだ少し後ろ向きの印象があるようです。
(一時期話題になった「ハゲタカ」とか、世間を騒がせたような事件の影響でしょうか??)

しかし実際には、事業承継・後継者問題の解決策として、M&Aが利用されるケースがますます増えてきています。

レコフデータによると、2016年の日本企業のM&Aは2,652件(前年比+9.2%)で、2012年から5年連続で増加したようです。
2012年頃と比べると、1.5倍くらいの規模になっていますから、かなりの増加ですね。

なお、中小企業庁のホームページには、後継者問題に悩む経営者の方々に向けた「事業引継ぎハンドブック」という資料でM&Aのことが分かりやすく解説されています。(http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2015/150407hikitugi2.pdf

買収した場合に経理関連業務について確認すべきこと

このようなM&Aによる買収が行われると、買収側の会社に付いて回るのが、
「相手の会社をどのようにコントロールしていくか?」
という問題です。

特に、経理関連の業務について、必要になることを簡単に整理してみます。

まずは正しく相手先の現状を把握すること

まずは、相手先の経理業務に関する状況を正しく把握しなければなりません。

買収交渉の際には、相手の財産状態を正確に把握するために色々と調査しているはずです。

通常、そのような調査では
・現状の経理処理(財務諸表)
・本来あるべき(望ましい)経理処理
・「現状」と「「あるべき」との差異金額
が明確になります。

例えば、「退職給付引当金が一切計上されていない」というようなケースがあります。

「社内規定からすると本来は計上すべきだが、税金計算上は問題ないため計上していない」
ということが起こり得ます。
この場合には、現在の財務諸表よりも実際にはもっと負債が多いということになります。

このような調査結果を参考にしつつ、経理処理の要修正項目を把握していくことになります。

当社側との違いを明確にすること

調査で明確になった処理方法の違い以外でも、当社側とは処理が異なるというケースが想定されます。

「経理処理は間違っていないが、当社側の処理とは違う。」
というようなケースです。

例えば
・勘定科目の基準が違う。
・売上や仕入などの計上基準が違う。
なんていうこともあるでしょう。

いずれにしても「当社側と相手先とで何が違うのか?」ということを、まず最初に明確にしておかなければなりません。

相手に変えてもらうことを明確にすること

相手側の処理との違いが分かったら、それらについて
・変えてもらう必要があるもの
・変える必要がないもの
を明確にします。

そのうえで相手に変えてもらう必要があるものについては、きちんと処理方法を変更してもらわなければなりません。

なお、変える必要があるかどうかについて自社内で判断がつかない場合は、顧問税理士や監査法人などと相談してみると、参考になる意見がもらえるのではないでしょうか。

言葉の意味を正確に共有すること

このようなケースで相手に依頼(要求、要請)することがある場合、大切なのは言葉の意味を正確に共有することです。

1つの単語を言えば、お互いが同じレベルで正しく理解できていることが理想です。

例えば、前述の事例で
「退職給付引当金を計上してください」
と伝えても、当社側が考える「退職給付引当金」でなければ意味がありません。

そのためには、どう計算したら良いかをあらかじめ伝えていなければどうにもなりません。

また、「実地棚卸しをやってください」と伝えても、棚卸しのやり方を間違えていれば、やはりどうにもなりません。

時間も手間もかかることですが、手戻りを避けるためにも、最初の段階で時間をかけてしっかりと詰めておくべきところと言えます。

連結決算対象の子会社になる場合

買収側が上場会社などの場合には、さらにそれまでとは異なる対応が必要になります。

・決算スケジュール
・より正確な会計基準の適用
・監査法人対応
・社内管理体制
・親会社へのレポート

これ以外でも、子会社側ではなにかと負荷が増すことになります。

なお、会社の規模や社内の業務分担などにもよりますが、「決算スケジュール」はハードルが高い問題かもしれません。

月次決算が翌月の3日以内くらいまでに出来ているところは問題ないでしょう。

ところが、「翌月の中旬頃にようやく完成している」というケースではかなり厳しいです。
翌月前半〜遅くとも中盤には、親会社に数値を報告しなければならないからです。

買収された側にとってはプラス面も

買収された側にとっては負荷が大きく増すことになりますが、マイナス面だけではないと思います。

外部の目が入ることで、日常の経理業務についてもきちんと整理することができるでしょう。

自分のやっている処理が正しいのかどうか自信がもてないという経理担当者も、相談する相手が増えるのは喜ばしいことかもしれません。

終わりに

どのような状況での買収であれ、また、買収する側とされる側のどちらの立場であれ、「買収」という非日常的な事態が発生している以上、軌道に乗るまではかなりの負荷がかかることは覚悟しなければなりません。

そして、少しでも円滑に業務を進めるためには、関係者間での密なコミュニケーションが必要になるのは間違いありません。

社内の同部門であれば「一」言えばOKだったとしても、環境が違うところで仕事をしてきた人には「十」言わなければ通じないという可能性は大いにあります。

どのような立場であれ、それくらいのつもりで相手と接することができれば、無事に乗り越えることができるのではないでしょうか。

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【編集後記】

この週末、PCのファイル整理やブログのページの修正などにかなりの時間を割きました。
毎日少しずつ時間を確保していかなければいけないのですが。

【昨日の1日1新】
*「1日1新」とは→詳細はこちら

Google Authenticator
Evernote使い方の研究とnoteの整理など
深夜食堂(Amazonプライムビデオ)
KKRホテル 芙蓉でランチ

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