固定資産の修理や改良、部品の交換などを行う場合、それが経費になるのか、固定資産になるのか、迷うことも多いのではないかと思います。
今回、オフィスの蛍光灯をLEDランプに取り替えた場合の取り扱いを再確認してみました。
(論点としては4〜5年前に話題になっていた古いものですが・・・)
修繕費と資本的支出の基本的な考え方
固定資産への支出に関する税金の考え方としてよく使われる言葉に、「修繕費」「資本的支出」というものがあります。
ざっくり言ってしまえば
・修繕費:修理費用として経費にできるもの
・資本的支出:固定資産を取得したものとして取り扱うことになるもの
という違いがあります。
なんとなくイメージがわくかもしれませんが、実際に判断する場合、その基準となる考え方や解釈は結構悩ましいところです。
よく書かれているのは次のような表現です。
修繕費:
修理・改良のために支出した金額のうち、「固定資産の通常の維持管理のため」「き損した固定資産の原状回復のため」に要した金額
資本的支出:
修理・改良のために支出した金額のうち、「固定資産の価値を高めたり」「耐久性を増すこととなる部分」に対応する金額(ただし、20万円未満の場合には修繕費とすることができる)
これらの表現も文字だけで見るとなんとなくイメージできる気もしますが、具体的に考えれば考えるほどよく分からないというケースも多いのではないかと思います。
蛍光灯をLEDランプに交換した場合の取り扱い
では、オフィスの蛍光灯を寿命が長いLEDランプに交換した場合には、どのような取り扱いになるでしょうか。
単純に考えると、照明設備(建物附属設備という固定資産)の使用可能期間が延長したり、節電効果が高まるので、
資産の価値が高まる==>資本的支出==>ただし金額が20万円未満であれば修繕費
と考える人も多いのではないでしょうか。(私自身、最初はこう考えていました)。
ところが国税庁ホームページの質疑応答事例によると、金額に関わらず「修繕費」というのが当局の見解です。
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/04/12.htm
理由は「蛍光灯は照明設備の一部品であり、部品の性能が高まったとしても固定資産(照明設備)として価値が高まったとまでは言えないと考えられる」ということのようです。
(LEDランプは高いとはいえ、単価としても知れていますしね)
ちなみに、単なるLEDランプへの取り替えだけが論点となっており、例えば工事が伴う場合にどうなるの?などといったことには触れられてはいませんので念のため。
ただ、こうなるともう、それぞれの考え方次第なのでは?という気もしてきます。
逆に別のケースで、判断が難しいような高額な支出があった場合、一部品の価値が高まっただけだからという理由だけで「修繕費」と判断できるかと言えば、少し慎重にならざるを得ないのではないかとも思います。
詳細は割愛しますが、修繕費と資本的支出はグレー部分がかなり多いこともあり、簡易的に判断するための形式基準などもいろいろと設けられています。
このような形式基準もうまく使いながら、できるだけ会社側に有利な方法を選択していくことが大切なポイントになりますね。
ちなみにこのような判断をする場合には、
・きちんと根拠を整えておく
・しっかりと理論武装しておく
・その内容をメモに残しておく
・税理士などにも確認しておく
ということをおすすめします。
「知識」のアップデートを常に意識する
修繕費か資本的支出か、という問題だけでなく、業務に関わる全般に言えることですが、自分自身の持っている情報が古くなっていないか、新しい見解が示されていないか、を常に意識しておくことが大切です。
税金に関する専門書で見解が述べられているものでも、後日、当局から違う見解が示されるということも実際に起こります。
専門家としての武器である「知識」がアップデートされていなければ信頼を得ることもできませんので、
・新しい情報が入ってくるようにアンテナを立てておく
・情報が入ってくるような仕組みを用意しておく
ことが大切であると改めて感じています。
【編集後記】
昨日は個別でのコンサルティングを受けてきました。
自分のこととなるとついつい視野が狭くなりがちですが、客観的な立場で見ていただくことにより、「新たな気づき」あり、「忘れていたことの再確認」あり、で有意義な時間を過ごすことができました。
意識してこのような機会を作っていかなければいけませんね。
【昨日の1日1新】
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