減価償却の方法とは?選べるもの・選べないもの・計算方法の違いなど。

固定資産を経費として処理するのが「減価償却」と呼ばれるものですが、減価償却にはいくつかの方法があります。

選べるもの、選べないものがありますので、方法の違いなどを含めて整理します。

減価償却の方法とは?

固定資産を買った場合には、その資産を使える期間にわたって経費にしていく(減価償却)ことになります。

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そして、その経費にする金額の算定の方法が「減価償却の方法」であり、複数の方法があります。

税金計算上、認められている方法は、大きく分けると次の4種類になります。

1.定額法:毎期定額を経費にする方法

2.定率法:簿価に定率をかけて経費にする金額を算定する方法

3.生産高比例法:資産の使用度合いに応じて経費にする金額を算定する方法

4.リース期間定額法:リース資産の取得価額をリース期間で割った金額(定額)を経費にする方法

この中では、一般的に耳にすることが多いのが、「定額法」「定率法」だと思います。

また、これら以外に「級数法」という方法もあり、会計処理としては許容されるものですが、税金計算上は認められていません(ですので適用しているケースは少ないと思われますね)。

資産を取得した時期によってさらに細かく

税金計算をする際に認められている減価償却の方法は、前述の通り、大きく4種類に分かれます。

また、「定額法」「定率法」「生産高比例法」については、資産を取得した時期によってもう少し細かく分かれています。

具体的には次のようになります。

1.定額法

定額法:平成19年4月1日以後に取得した資産

旧定額法:平成19年3月31日以前に取得した資産

2.定率法

200%定率法:平成24年4月1日以後に取得した資産

250%定率法:平成19年4月1日以後、平成24年3月31日以前に取得した資産

旧定率法:平成19年3月31日以前に取得した資産

3.生産高比例法

生産高比例法:平成19年4月1日以後に取得した資産

旧生産高比例法:平成19年3月31日以前に取得した資産

4.リース期間定額法

実際の計算方法は、文字で表現するのが分かりにくかったり、細かい部分が複雑だったりするので、今回は触れません(多くの会社がシステムを利用して計算されていると思いますし)。

それぞれ、定額法の中、定率法の中、生産高比例法の中で見てみると、それほど大きな違いはありません。

ですので、まずは大きく4種類、その中でも一般的なものは2種類(定額法、定率法)と理解しておけば良いのではないかと。

減価償却の方法で選べるもの・選べないもの(法人)

前述のように、減価償却の方法は複数ありますが、どの資産にどの減価償却方法を選択すれば良いでしょうか。

資産の種類によっては、減価償却の方法が強制されるものもあります。

法定償却方法

法人の場合、法人税法では、減価償却方法を会社が届け出ることによって、減価償却方法を選択することになります。

ただし会社が届け出なかった場合には、どの償却方法で計算するかが決められています。

それが「法定償却方法」というもので、資産によって次のように決められています。
(過去は除いて、「平成30年8月現在」で取得したら?だけに限定しています)

  • 建物:定額法
  • 建物附属設備:定額法
  • 構築物:定額法
  • 工具器具備品:定率法
  • 車両運搬具:定率法
  • 無形減価償却資産:定額法
  • リース資産:リース期間定額法

法定償却方法以外の方法が選べないもの

また、上記の法定償却方法以外の方法が選べる資産と選べない資産があります。

具体的には、次の資産については、法定償却方法でしか計算することができません。

・建物:法定償却方法の定額法のみ
・建物附属設備:法定償却方法の定額法のみ
・構築物:法定償却方法の定額法のみ
・無形減価償却資産:法定償却方法の定額法のみ
・リース資産:法定償却方法の定額法のみ

逆に、これら以外の工具器具備品、車両運搬具については、法定償却方法である定率法ではなく、定額法を選択することもできることになります。

例えば、
建物・・・定率法で処理したい=>NG
工具・・・定額法で処理したい=>OK(届け出は必要)
ということになるわけです。

定額法と定率法の違いをざっくりと

一般的に多く使われている定額法と定率法で、税金計算に与える影響の違いをざっくりと確認します。

簡単に書くと、次のようになります。

*定額法:毎期定額を経費にする方法
=>減価償却費は、資産の使用開始時から法定耐用年数の最後まで毎期定額(同額)。

・定率法:簿価に定率をかけて経費にする金額を算定する方法
=>経費になる金額は、使用開始時が一番大きく、毎期徐々に減っていく。

税金計算上のインパクトという意味では、資産の使用開始直後には、定率法のほうが経費にできる金額が増える(税金が減る)ということになります。

で、あらためて法定償却方法しか選べないものを見てみると、すべて「定額法」であることが分かります。

つまり、資産の購入直後に税金計算のメリットが大きくなる「定率法」については、選択できる資産が限定されているということになります。

実態に合わせて選択するのが基本。ただし実務上では??

法定償却方法が決められている資産については、選択の余地がありませんので、「定額法」「リース期間定額法」を選ぶことになります。

では、選択することができる資産(工具器具備品、車両など)は、どのように償却方法を選択すれば良いでしょうか。

一般的には、定率法を選べる資産は定率法、という会社が多いのではないかと思います。

買った直後に経費とすることができる金額が多ければ、その分、税金を減らすこともできますし(トータルでは変わりませんが)。

一方で、固定資産の貢献度合いという意味では、その固定資産を使用しつづけている限り、あまり変わらないという考え方もあります。

例えば、工場の設備で考えても、買った年とその翌年でその貢献度合い(機能・働き・便益)に大きな差があるか?と言えば、そこまで大きな差がないことも多いのではないかと。
(メンテ費用が徐々にかかるようになる、ということはありますが)

つまり、定率法よりも定額法のほうが実態を表していると考えて、「定率法」ではなくて「定額法」を選択するケースが増えてきていると言われています。

実務上、買った直後の税務メリットを考えて無条件で「定率法」を選択しているケースも多いとは思いますが、実態を鑑みながら、減価償却方法を検討してみても良いかもしれません。

なお、同じような資産を、あるときは定率法/あるときは定額法のように、都合よく変えることはできませんので、しっかりと検討することが必要になります。

おわりに(個人事業:所得税の場合)

上記は、基本的に法人を前提として書いてきました。

個人事業者の場合、所得税では、法定償却方法はすべて「定額法」とされています。

法人と同じように、工具器具部品や車両などでは、「定率法」を選択することは可能です。

ただし、「定率法」は法定償却方法ではありませんので、届け出をしなければ選択できないことに注意が必要です。

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【編集後記】

”いまさら感”たっぷりですが、近藤麻理恵(こんまり)さんの片付け術の概要を知り、なかなか面白いかも!?と感じました。
この週末を使って、どうにもならなくなりつつ本棚を整理してみようかと。
職場の机が汚い人、部屋が汚い人、片付けが苦手な人で「変わりたい」と思っている人は、試してみると面白いかもしれませんね。

【昨日の1日1新】
*「1日1新」とは→詳細はこちら

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