仕事をしていくなかで、お金をいただく相手にどこまで突っ込んだ話ができるか?
これは、なかなか難しい問題だと感じています。
お金をいただく相手はお客様?
仕事をする上で、「お金をいただく相手はお客様」というのが基本的な考え方です。
・物を買っていただく
・提供するサービスを買っていただく
などは分かりやすいところでしょう。
一方、お客様という括りがイマイチしっくりこないものとしては
・病院(患者はお客様?)
・各種学校(生徒はお客様?義務教育は?専門学校は??)
などが挙げられます。
確かにお金は払う(払ってもらう)として、お客様と言えるのかどうかは微妙なところもあります。
それでもお金を支払う側が「選ぶことができる」という意味では、広い意味ではお客様という括りでも良いのかなと思っています。
で、このようなことを考えるときに必ず頭に思い浮かぶのが会計監査の問題です。
会計監査の問題が出るたびに感じること。ゴーン氏の事件でも!?
会計監査とは、上場している会社など、法的に会計監査を受けることが義務付けられている会社が受ける必要があるものです。
会社が自ら監査法人を選び、その監査法人にお金を払って監査を依頼する。
ということになります。
現在、ゴーン氏の金商法違反が大きな話題になっています。
ゴーン氏と日産自動車がやってきたことについて、
・監査法人側は、問題があるのではないか?と感じて会社に問い合わせていた
・最終的に問題はないと判断した
・ところが、実際にはやはりそこに問題があった
などと報道されています。
実際のところは当事者でなければ分からないことも多いですが、
監査法人の突っ込みが足りなかった。
などと言われているのは、確かにその通りだったのでしょう。
では、なぜ突っ込みきれなかったのか?ということを考えると、会計監査に関する現状の仕組みの限界ということになるのでしょう。
・監査法人は会社(日産自動車)から依頼されてお金をもらって監査をしている。
わけですから、厳しいこと・会社が気に入らないことを指摘することで契約を切られてしまったら意味がありません。
もちろん携わっている当事者たちにはそんな意識は全くないと思います。
ただそれでも、最後の最後に突っ込みきれるかどうか、というのはかなり難しいのではないかなと。
以前の東芝の件でも同様ですが、どうしても会計監査に限界はあるのだろうと感じています。
税理士でも同じこと!
このような限界は、税理士でも同じことが言えるのではないかと思います。
顧問先からお金をいただく以上は、その顧問先の満足度が最大化されるように心掛けていくことが欠かせません。
ただ、もしも
・脱税相談
・かぎりなくブラックに近い処理方法の相談
・それ以外でも法律に反するような行為を求められる
なんてことがあると、一瞬「うっ!?」と悩むことがあるかもしれません。
お金をいただく以上、相手のために100%全力を尽くすのは当然ですが、
なんでもかんでも「すべてOK」
ではないわけです。
グレーなものを限りなく白に近づける部分というのは、もしかすると税理士の腕の見せ所かもしれません。
ただし、完全に真っ黒なものを「白」とすることは、いくらお金をいただく顧問先からの要望だったとしても認めることはできないということになります。
真のお役立ちとは?
お客様に対する「真のお役立ち」とはなんだろうか?とふと考えることがあります。
少なくとも
お金をいただいている相手(お客様)の要望をそのまま100%満たすことだけ
ではないはずです。
そこにリスクがあるのであれば、しっかりと伝えるべきでしょう。
今回のゴーン氏のケースでも、監査法人はおそらくもっと突っ込んで聞いておくべきだったのでしょう(詳しくは分かりませんが)。
監査法人として、「契約をバッサリ切られたら困る」という感覚があったのかどうかは分かりませんが、
・問題ありと認識しながら突っ込みきれなかった
・それを容認してしまった
・結果的に大きな問題となってしまった
・会社は大きなダメージを負うことになった
ということを考えると、少なくとも「真のお役立ち」とはほど遠い状態だったということは間違いないのではないかと。
「そんなのは単なる理想論に過ぎない」などと諦めずに、少しでもこのような意識を持ち続けていくことが、まずは必要なのだろうと考えています。
【編集後記】
昨日は前職でお世話になった元上司の方の送別会でした。
それほど時間が経っていないとはいえ、昔のことを思い出しつつ、懐かしく感じつつ、いろいろと考えることもありました。
【昨日の1日1新】
*「1日1新」とは→詳細はこちら
神楽坂 船形